SIerから事業会社に転職して1年が経った
SIerから事業会社にエンジニアとして転職してもうすぐ1年と2ヶ月になる。
本当は新年のタイミングで振り返りをしてブログを書こうと思っていたが、業務内容的にも取り組んできたこととしても“区切り”という感じがしなくて放置していた。 最近はかなり一区切りついた感じがでてきたので、転職してから今までの振り返りをしておきたい。
転職前
文系出身で準大手のSIerに入社し、炎上PJの追加要員だったり、海外と国内でそれぞれチームリーダー経験したりしていた。 スクショをExcelにひたすら貼り付けさせられたり、全テストパターンの帳票を印刷させられたり、サクラエディタしか使わせてもらえなかったり、あるあるネタは体験しつつも、主に社会経験という意味で多くのものを学ばせてもらったと思う。特に海外の炎上PJに参加させてもらったのはレアな体験をした。 SIerに対しては今もマイナスの意味で思うところはあるが、先人たちが散々意見を表明してくれてるのでそれに任せたい。社会の構成要素としてこんな種類の仕事があるんだなーということが体験できたのは良かったが、個人のスキルを獲得し、伸ばす場としては4年もの長期在籍する必要はなかったと思う。転職後、環境に恵まれた部署もどうやら存在するらしいと観測しているので、自分が大企業ガチャでハズレを引いただけだと思っている。
転職活動
前職はJavaとクライアントサイド自社言語(闇)の保守案件くらいしか技術寄りのことはやっておらず、デプロイも手動でドラッグ&ドロップといったような世界線にいたので、面接でお会いした各企業のエンジニアとの知識ギャップに苦労した。 自己学習としてProgateやN予備校でオンライン講座を受けたりRuby on Railsのチュートリアルをやったりしてたものの、そのくらいのレベルのポテンシャル採用枠は転職市場に常に一定数存在しているので、今となって振り返るとかなり競争が激しいレンジに居たのだろう。当時は特に差別化の戦略も取っていなかったけど、前職でプロセス改善とかは得意な方でいろいろやっていたので、そのエピソードを気に入ってもらえた今の会社に拾ってもらえたので感謝している。
入社後
憧れがありつつも前職では触れることのできなかったGithub、CI/CD、アジャイル・スクラム、チーム開発、AWS、有料IDE、書籍購入制度などを体験できて、毎日が新鮮で、学びがあった。自分の知らないことを持ち帰って勉強して、周囲に相談して、実装して、テストして、リリースするいいサイクルが回っていたと思う。
入社後3ヶ月以降
私が入社する前に溜まりきっていた数々の問題点が組織内で爆発したタイミングだったと思う。主力のエンジニアがごそっと辞めてしまい、ひと悶着もふた悶着もありながら自分にはチームリーダーという曖昧な役職が与えられた。ちょうどこの頃社内で流行った名著「エンジニアリング組織論への招待」にも登場する「認知の歪み」のオンパレードを生で体感できたのでかなりの当事者感をもった読書ができた。情報の非対称性や、認知バイアスなど大学で学んでいた分野が意外にもエンジニアリングに繋がりそうで、これがconnecting the dotsかと感慨深かった。 どうにかしてやろうという気概もあったし、実際本当にどうしようもない状況だったのでひたすら本を読んで、実践して、他社の事例を参考にして、試して、という感じで日々を過ごしていた。 与えられたミッションは重かったが、責任は取るから好きにやって良いというニュアンスの言葉を上司からもらっていたので、本当に好きに色々試せて楽しかった。 詳細は省くが、大きなテーマでは以下のようなことに取り組んでいた。
- スクラムプロセスの改善(まずはお作法通りのやり方に戻すところから)
- トランザクションスプリクトからオブジェクト指向パラダイムへの移行
- チームメンバー間のスキル勾配の解消
- レガシーシステムの負債返却戦略
- 社内受託感の緩和のための活動
- ベロシティから逆算してのリリース予定日算出
- 障害対応プロセスの改善
うまくいったこともあるし、今ならこのやりかたはしないなというものもあるけど、自分の血肉にはなっていると思う。今はオーバーエンジニアリングなのでは?と思う設計をした部分が負債化しないかビクビクしながら引き継ぎを行ってたりする。
現在
当時に比べたら状況は良くなったように思える。課題はまだまだ多いものの、継続的なリリースができるようになっているし、振り返りによるプロセスの改善といった基本的なことは定着化している。 また、来期に向けて人が倍以上に増えようとしているなかで、自分がリーダーとして機能できる人数の臨界点を超えたな、と思っていた矢先に、信頼できそうなマネージャーの人が新しく入ってきてくれて、自分はリーダーを降りてみた。 人数やスキル勾配が特殊な状況だったとはいえ、自分一人で採用、育成、技術選定、アーキテクチャの意思決定、事業部との調整、ファシリテート、スクラムマスターなどを引き受けていたので、ちょっと走るのに疲れたというのもある。 大体の人間は、コミットするべき業務範囲が広いと何かが中途半端になるはずで、自分も最近ガソリン切れでそうなってきてたのを感じていたのでちょうどいいタイミングだったと思ってる。 特に採用周りが中途半端になってしまい、成果を出せなかったので反省している。
これからどうするか
チームレベルでの問題点は、チーム自体に問題発見・解決の能力が備わった時点でもう自分がいなくてもなんとかなるなという気がしている。(ただ、能力の高い特定の個人の発言にTRYの内容が依存しがちってのは今も悩んでる。そういう立場の人間が1人になるとチームは健全性を失うと思う。) ただ、チームレベルで改善できることはガンガン変えていける一方で、その先一段階層があがった組織や、会社そのものが持つ問題点へのアプローチは今の自分では力が及ばないことが多くて、色々トライしてみたものの、無力感だけが残る結果となっている。こことの折り合いのつけ方がいまいち分からなくて悩んでいる。
転職時に考えていた、ポータブルスキルを高められたのか、という点においては、諸々中途半端になっている。欲を言えばもっと日常的に自分のスキルが足りないことに焦りたいのだが、相対的に今の組織だとできる方になってしまっているのが正直不満ではある。 今の環境のままで頑張るのであれば、勉強会にもっと積極的に参加したり、社外での活動の場を増やしてくのが王道なのだと思う。欲を言えば週に半分ずつくらい、自分が貢献できる場で働き、残りの半分は自分が学習できる環境で働きたい。そういう風に世の中がシフトしていくと嬉しい。 ある程度成熟した組織なら、組織内でできる取り組みかもしれないが、そうはいかないのが現実なので、どちらの環境に身を置くかは選ぶことになるとは思っているが、コンフォートゾーン化するくらいなら出るべきだとは思っている。
まとめ
自分が解決したい課題のためなら努力は厭わないタイプなのは実証してきた1年だったと思うが、解決までのロードマップが思い浮かばない広大な課題に直面することが多くなってきた。 そういった類の問題は人を動かさないことには解決に向かわないが、自分はこの人を動かすという分野を苦手としている。これは今後生きていく上で身につけていくべき能力だと思い勉強中ではあるが、その前にまず“自分の能力で何ができるのか?”という部分を突き詰められていないことに焦りがある。
自分には何ができるか?自分は何を解決したいか?ということを考え直すタイミングにぶつかっていて、日々考えているのだけれどいまいち答えがでない。色々な人に会って、話を聞いて、考えるタイミングなのだと思う。